イシサンゴで単体性と群体性の差異が個体発生のいつ頃発現するかを明らかにするため、遺伝的に等しい単体性サンゴ同士が接触しても癒合しなくなるのは発生のどの時期かを調べることを試みた。単体性のFungiaおよび群体性のPavona属の2種のサンゴ由来の解離細胞は、それぞれ再凝集しtissue-ballを形成した。どちらのサンゴ由来のtissue ballも、同じサンゴ由来のtissue ballとは癒合した。17日間生存したtissue ballでは、胃層、中膠、皮層の3層構造が形成されていたが、着生はしなかった。Fungiaの遊離組織片由来のtissue ballは着生し、骨格を形成した。今後はこのようにして得られる遺伝的に等しいポリプを使用して接触実験を行う。 同時に群体性サンゴにおける組織癒合の遺伝的コントロールを調べることも試みた。群体性のハナヤサイサンゴで、同じ群体より放出された兄弟プラヌラ幼生同士の間で接触実験を行ったところ、48ペアすべて癒合した。親群体と子プラヌラ同士の接触実験を行ったところ、2例とも癒合した。これらの結果は、ハナヤサイサンゴにおいても、群体性ホヤ類と同様、群体特異性遺伝子の対立形質のうち少なくとも1つを共有すれば癒合するという可能性が示唆された。 TRAP法を用いて単体性および群体性サンゴでテロメラーゼ活性を測定することを試みた結果、群体性のアザミサンゴおよび単体性のクサビライシのどちらにも50bpのバンドが見られた。しかし典型的なラダーパターンは見られなかった。培養褐虫藻にも同様のバンドが見られたため、今後サンゴと褐虫藻を分けてテロメラーゼ活性を調べる必要がある。
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