研究概要 |
研究の初年度であるため,琉球列島の固有植物を中心に研究材料の検討と収集を中心に行った.今年度は,遺存固有種としで分子系統地理学的な解析を行う予定のヤエヤマスミレ(スミレ科)とコケタンポポ(キク科)の実験材料の収集と外部形態の観察を行った.次年度は分子系統地理学的な研究を進める.その他,今年度に購入したラン科植物のマイクロフィッシュを用いて,次年度にはラン科植物相の分類の再検討を行うとともに,遺存固有種の絞り込みを行う. 固有種を中心に琉球列島産のガガイモ科植物の染色体数の算定を行った(雑誌論文4).琉球列島内で著しい種内倍数性を示す琉球列島固有種のミヤコジシバリ(キク科)は,雑種起源であること,その起源は複数回あるごとを分子系統学的な手法で証明した。(雑誌文献5).ミヤコジシバリの種内倍数性は,琉球列島の地史と深い関わりがある可能性があり,この問題については今後も分子系統地理学的な解析を行う.アカネ科のサツマイナモリ属とボチョウジ属の染色体数を算定し,琉球列島固有のアマミイナモリは近縁なサツマイナモリの倍数体起源であることを明らかにした(雑誌文献6).また,植物相に関する既存の文献資料を整理して,その内容を概観し(雑誌論文3),琉球列島の遺存固有種の起源についてふたつの可能性があることを議論した(図書1).琉球列島中部と南部では数少ない活火山の硫黄鳥島の植物相と植生を初めて報告し,遺存固有種と見なせる種が少数ではあるが自生していることを示すとともに,植物相の起源について考察を加えた(雑誌論文1・2).
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