平成16年7月に沖縄本島の億首川河口付近、西表島の相良川、後良川および船浦河口付近、および石垣島名蔵および野底付近に分布するマングローブ林、および本島の恩納村、西表島の船浦、石垣島の野底の亜熱帯林においてコウヤクタケ科および類縁菌科の発生子実体について、その状態、基質の樹種、発生部位、腐朽様式など、可能な限りの生態的性質を記録するとともに乾燥標本を作製した。本調査において200点の子実体標本を得ることができ、これらのうち110点については多胞子分離、子実体組織分離あるいは基質材から分離菌株を得ることができた。分離菌株は純粋培養後、液体窒素凍結保存を行った。また、分離培養を行った55点の子実体標本から直接DNAを得るために各子実体組織のエタノール浸漬標本を作製した。分離菌株および子実体について、現在DNA解析を進めている。今回の調査および前年度の調査で得られた子実体乾燥標本についても順次分類学的同定を進めており、新たに日本未報告種としてResinicium friabile Hjortstam & Melo、Tofispora repetospora Langer & Ryvarden、Asterostroma muscicola (Berk. & M.A. Curtis)Masseeの3属3種を見い出した。さらに、マングローブの1種であるマヤプシキ枯木に特異的に発生するコウヤクタケ類の1種について、その子実体標本の形態的特徴、詳細な生態的調査結果、分離培養菌株の生理的性質(耐塩性、酵素活性)、さらに18Sおよび25SrDNAの系統解析に基づき、本種が新属新種であることを明らかにした。
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