研究概要 |
岩石穿孔性のテッポウエビ類は西大西洋から2種,インド西太平洋海域から約10種が知られている。いずれも独特のハンマー型の可動指をもっており,機械的に穿孔すると推察されている。本研究においては,3年間の調査において琉球列島にどのような種がいるか,どのような生活をしているのかを明らかにしようとするものである。初年度においては,研究計画に基づいて,文献資料を収集してカリブ海やミクロネシアにおける先行研究の実情を調査した。また,研究協力者の(財)名古屋港水族館の掘井直二郎技官の助力を得て,平成15年1月と3月に石垣島および西表島において潜水採集を行い,相当数の標本を得た。今年度は分類学的研究に主眼をおいているため,標本はすべて固定して国立科学博物館に持ち帰ったが,巣孔がどのような形状であるかを知るために,岩石を注意深く割って標本を取り出した。岩石が硬いために,すべてがうまく取り出せたわけではないが,可能な限り,巣孔の形状を記録するように努めた。現在も標本の取り出しが続けられているが,種の同定作業も文献に照合して進められている。今年度は調査の開始が遅れたために,抱卵個体は得られなかった。従来の記録はないが,他のエビ類と同様と考えられるため,来年度は夏に調査を行い,水槽内飼育によって,幼生あるいは稚エビがライブロックにどのように取り付くのか観察する。今年度に採集した標本については,同定結果を記載論文としてまとめるとともに,巣孔の開口部に注目して報文を書く予定である。
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