本研究においては、最終的には、琉球列島各地において、岩石穿孔性テッポウエビ類を採集し、どのような種がいるのか、また、同じような生態をもつカニ類とどのような関係にあるのかを明らかにすることを目的とした。当初の目的である穿孔をどのように行うかということについては、短期間には難しいことが判明し、個体サイズによってどのような孔道を掘るのかを明らかにするに止めた。 資料収集は平成16年度まで終了し、平成17年度においては、テッポウエビ類および共産するカニ類の同定を行ない、カッターで岩石を薄切りにして孔道の状態を観察した。孔道は一定ではなく、大型個体がすむ孔道ほど太く、また、枝分かれしていた。結局、奄美大島から石垣島までの各地において採集された岩石穿孔性テッポウエビはヤワラテッポウエビAlpheus obesomanusの1種のみであった。 岩石あるいは死サンゴを割ると、孔道からマルディビアガニJonesius trigunuyiculataかごく近縁のトゲマルディビアガニJ.palmyrensisが出てくることがある。甲幅5mmほどの小型種で、自ら穿孔できるとは思えず、テッポウエビ類が利用していた孔道にすみついている可能性が高い。事実、孔道の内壁はテッポウエビ類が利用している場合と異なって腐食しでいるように見える。研究の結果は、これら2種は別属とするのが適当と判断された。 テッポウエビは孔道内に雌雄ですみ、開口部の直径が1.5〜2.5mmにすぎないため、外に出ることはできない。開口部は必ずしも一つではなく、内部は比較的広く、ハンマー状の可動指を使って掘り広げていくと考えられる。岩の表面には藻類が生育しており、開口部から分節した胸脚を出して管理し、食べる様子が観察された。
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