研究概要 |
本研究では中新世〜鮮新世にかけて出現した現生東アジア霊長類の系統的起源と地理的分布の変遷を古環境変動と関連させて総合的に明らかにしょうとするものである。この研究は近年注目されている生物多様性の保存とも密接に関連している。過去数千万年に渡る環境変動の中で、いかにして生物たちが絶滅あるいは生存してきたかを解明することは、これからの地球環境の変動に伴う動物たちの進化の行く末を予測するものである。 本年度はまず最も日本に近い東アジア地域、特に中国各地の新世代後半の霊長類化石に関する文献とデータの収集をおこなう目的で北京にある古脊椎動物・古人類学研究所(IVPP)を訪問し、情報と化石模型の収集につとめた。これらのデータを解析し、アジア大陸の霊長類の進化プロセス仮説の第一段階としての総説論文を専門誌である『霊長類研究』に発表した(高井、2002)。また新世代後半(新第三紀)のアジアの霊長類の進化を考察するためには、新生代前半(古第三紀)のアジア大陸の概況を把握し、その時点における化石霊長類の分布状況を明らかにする必要があるので、この点に関する総説も専門誌『霊長類研究』に共著論文として発表した(鍔本ほか、印刷中)。 また東南アジアのミャンマーで発見された始新世の霊長類化石に関する記載論文を複数執筆し、国際専門誌に発表している(Takai et al., in press ; Gebo et al., 2002 ; Shigehara et al., 2002 ; Tsubamoto et al., 2002)。
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