AlN障壁層中のGaN量子ドットの電子状態を分極ポテンシャルに依存したsp^3強結合法を用いて原子レベルから理論計算した。本研究では、Keating型のValence-Force-Fieldポテンシャルを用いて歪分布の計算を行い、有限差分法を用いて分極によって誘起されたポテンシャルと電界の分布を計算した。ここでは、自発分極と歪によるピエゾ分極を計算に取り入れている。GaNドットの形状は、頂点の切り取られた六角形ピラミッド型で、底面の直径は10.14nm、高さは2.07nmを想定した。このドット寸法は、実験で成長されたGaN量子ドットの大きさに対応している。分極によって、量子ドット中には、最大で7.14MV/cmの強い電界が誘起されることが明らかになった。基底の電子と正孔準位間の遷移エネルギーは3.653eVであり、フォトルミネセンスの実験結果とよく対応している。上述の強い分極電界により、電子の波動関数はドットの頂点側に、正孔の波動関数は底面側に、それぞれ偏って分布する。その結果、両波動関数間の重なりが低下し、電子と正孔の再結合速度が減少することが予測される。(重なりの自乗値は7.97x10^<-2>である。) より寸法の大きな量子ドットの電子状態を計算するため、単一バンド有効質量近似法、及び歪に依存した8バンドのk・p法による計算プログラムを作成した。この計算手法を用いて、積層InAs量子ドットの電子構造の理論計算をあわせて行った。ここでは、歪分布の計算は連続弾性体モデルを用いて行い、変形ポテンシャルを通じて電子構造の計算に取り入れた。その結果、積層量子ドットでは、積層に伴い2軸性歪の低下が起きること、及び、ドット間隔6nm程度からドット間の電子の波動関数の弱い結合が見られることなどが明らかになった。この計算手法は、積層GaN量子ドットの電子状態の計算にも応用することが可能である
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