研究概要 |
本研究の目的は,光照射で屈折率(吸収)変化する有機非線形媒質バクテリオロドプシンを導波路媒質として方向性結合器を構成し,光で制御する光スイッチ素子を実現することである.光スイッチの小型化と多様性,低動作パワー,高速動作の点からデバイス形態にはチャネル型導波路が有利であり,その中で方向性結合器型を提案した. 初年度は,素子化基礎実験として,導波路材料であるバクテリオロドプシンの非線形光学特性を検討した.今回は,ワイルドタイプおよび遺伝子組替えによってさらに高安定化されたミュータントの2種類の市販の株を購入し,使用した.これを水溶性透明ポリマー(PVA)に混合し,ODをパラメーターとした薄膜を作製してその非線形光学特性を測定した. その結果,混合ポリマーの(パルス)応答時間は100msオーダー,また光損傷しきい値は,本実験で使用した強度範囲(〜50mW/cm^2)では,波長に依存せず,損傷は見られなかった. また,共同研究者の提案により,グレーティング結合器型スイッチ素子の方が将来性があると考え,その光学特性を検討した.理研の誇る微細加工技術(電子ビーム露光法)を駆使して,石英基板上に600nm〜700nmの周期でスラブ型フォトニック結晶を作成し,その上に上記バクテリオロドプシン混合ポリマーをスピンコートした.本年度購入した分光器を用いての透過特性を調べたところ,強い吸収ピーク,言い換えれば導波モードが得られた.しかし,まだ膜厚依存性およびポリマー作成の最適条件が得られていないので,今後の課題としたい.
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