研究概要 |
本研究の目的は,光照射で屈折率(吸収)変化する有機非線形媒質バクテリオロドプシン(bR)を導波路媒質としてフォトニック結晶上に塗布し,光制御型光スイッチを実現することである.本年度は理化学研究所所有の電子ビーム露光装置・ドライエッチング装置を用いて,石英基板上に矩形構造を作製した(露光面積1.5mm^2,周期600〜720nm).ここにbR混合ポリマーをスピンコートして導波路を構成し,その光学応答を評価した. 最適導波路膜厚を求めるため,PVAのみをスピンコーティングし,その透過スペクトルを測定した.PVA濃度,回転数によって,膜厚を130〜200nmに制御し,法線方向から白色光を入射させて(-40〜+40度)ポリクロメーターで分光する.その結果,導波モードあるいはBraggモードの励振による透過強度の損失に対応する鋭いディップが観察され,膜厚180nm付近で最大Q値を示した. さらにPVA溶液にbRを混入して塗布し,これを同条件下で光学測定した結果,複数の新しいディップが出現し,そのQ値は最大で800程度を示した.各ディップエネルギーを波数K_x=Ksinθの関数としてプロットした分散関係から有効屈折率を計算したところ,1.7〜2eV付近ではn^*=1.47,2.4〜2.7eV付近ではn^*=1.53となり,これらの値は石英の屈折率(1.46)やPVAの屈折率に非常に近いことがわかった.このサンプルにArイオンレーザー(515nm)を照射してbRの屈折率を変化させ,それに従って導波路に結合するモードすなわちディップの波長を変化させたところ,シフト量は0〜1nmで,He-Neレーザー633nm(半値全幅1.4nm)のスイッチングは十分可能であることを確認した.本年度の結果から,サンプルへの入射角度によって簡単にディップ波長を変えられ,複数のディップを同時にスイッチングに利用できることがわかった.次年度は,より大きなディップシフト量を得るために光誘起屈折率変化を大きくする条件を見いだし,複数波長でスイッチング動作を確認することが課題である.
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