研究概要 |
磁性半導体細線を埋め込んだ量子井戸構造の局在励起子の磁気フォトルミネセンス特性を調べた。〔0-11〕方向に3度あるいは5度傾斜したGaAs(001)微傾斜基板上にステップフロー成長モードでZnSe/ZnCdSe/ZnSe単一量子井戸構造を製作した。成長表面には一定幅のテラスを挟んだステップ列が規則正しく配列する。ステップの高さは1モノレイア(ML)=2.8Å、ステップ間隔は傾斜角で決まり、5度の場合は32Åである。厚み40ÅのZnCdSe井戸層の中央部の厚み3ML分を(ZnMnSe)_<1/3>/(ZnCdSe)_<2/3>の分数超格子にした。この成長プロセスでZnCdSe井戸層中央部に断面が約8Å×10Å、長手方向が〔011〕方向のZnMnSe細線が約30Åの周期で埋め込まれる。ZnMnSeはZnCdSeよりバンドギャップが大きいので磁性半導体細線は量子井戸内でバリア領域として作用する。磁界を量子井戸面内に印加し、井戸面に垂直方向から発光を観測した。零磁界で2.716eVに観測された量子井戸局在励起子発光が、磁界印加によって低エネルギー側に移動し強度が増加した。零磁界では縮退している|1/2,1/2>|3/2,3/2>励起子と|1/2,-1/2>|3/2,-3/2>励起子の縮退が磁界印加で解けて、PLでは低エネルギーの|1/2,-1/2>|3/2,-3/2>励起子が観測される。磁界が細線に垂直な場合のエネルギーシフトが、平行な場合のシフトより大きいことを確認した。この異方性は磁性半導体細線の1次元性に起因するものである。
|