強誘電体斜方晶ニオブ酸カリウム(KNbO_3(KN))結晶は、弾性表面波、バルク波で大きな電機機械結合係数も示すことが最近明らかになり、次世代圧電材料として注目されている。しかし圧電素子として使用する為には大口径結晶育成が必要である。この結晶は、融液からの結晶成長で育成されている。しかし育成時には立方晶であるKNは、435℃で正方晶に、さらに225℃で斜方晶に相転移する。この相転移の為に、大口径結晶が出来ても、冷却時の相転移により、その後の単分域化処理が困難、そして相転移時のクラック発生等の解決すべき問題が多い。 本研究では、これらの問題を解決できる水溶液からのKN低温相の直接成長及び水熱合成を検討した。K_2NbO_3Fを水中で攪拌すると、K_2NbO_3Fは徐々に溶け、水溶液中はKNbO_3に過飽和になるので、KN結晶が生成する。この結晶はX線回折から斜方晶であり、低温相斜方晶KN結晶の直接生成が始めて出来た。24時間程度の攪拌では最大100μmのKN結晶が得られる。KN結晶の大きさは、原料として用いるK_2NbO_3F結晶粒径に相関する。これはK_2NbO_3Fの溶解速度が、K_2NbO_3F粒子が大きいと速くなり粒子が小さいと遅くなることので、過飽和度に違いが生じ、核生成密度がK_2NbO_3F粒子径により変化するためと思われる。より大きくなる条件についても検討した。このK_2NbO_3F粒子を用いた水熱合成も検討した。130-380℃、1-23kbarの温度圧力条件で合成を行い、KN結晶の生成を確認した。水熱合成によるKN結晶生成の報告は本研究が始めてである。水溶液からの実験結果と異なり、立方晶KN結晶が大部分であったが一部斜方晶KNであることがわかった。常圧では立方晶KNは435℃で安定であるが、本実験では130℃から立方晶KNが安定化した。これはKN中のカリウムを水素が一部置換したことによると推定される。斜方晶KN結晶は、細かい多分域結晶であり、有用なエンジニアードドメインであると思われる。生成する結晶が大きくする条件を検討し、核生成密度制御が重要であることが判った。
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