本研究では現状のアンモニアガスセンサの問題点に着目し、センサ感応部の比表面積を大きくすることで従来では難しいとされている低濃度なアンモニアガスを測定可能なアンモニアガスセンサの作製に取り組んだ。具体的にはセンサ素子として水晶振動子を用い、この水晶振動子にアンモニアを吸着脱離するリン酸ジルコニウムをセンサ感応膜として製膜した。製膜方法としては基板に膜を塗布するキャスト法を用いた。リン酸ジルコニウム感応膜の比表面積を広げる方法としては、層状結晶α-リン酸ジルコニウムの層間剥離を行なうことで剥離微粒子を作製し、これを製膜することでより広い比表面積を有したセンサ感応膜が作製可能となった。水晶振動子式ガスセンサでは対象ガスによって感応膜の種類を選定することにより、非常に高い選択性を有することが可能である。本研究では感応膜のナノ構造制御による選択性の向上に着目して水晶振動子式のガスセンサを作製した。しかし、従来の水晶振動子式ガスセンサでは、感度が低いという欠点が存在する。従来の欠点である感度を克服するために、高比表面積材料をセンサ感応膜として用い、より高感度な水晶振動子式ガスセンサの作製を目指した。その結果100ppbのアンモニアガスのセンシングが可能となった。こうした研究結果を元に、実用化に向けたセンサデバイスのプロトタイプを作製した。センサデバイスに作製したQCM型センサ素子の他に温度、湿度センサを組み込んだ。各センサから得られた温湿度のデータを作製したアンモニアガスセンサにフィードバックすることにより、より正確なアンモニア濃度の検知を試みた。さらに、実際に市販されている半導体型アンモニアガスセンサとの性能比較を行なったところ、応答時間はほぼ同程度であった。また、作製したセンサデバイスの方が湿度依存は大きいものの低濃度のアンモニアに対する感度は優れているということが判明した。
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