酸化物超伝導体内のボルテックスと強磁性体内を伝搬する静磁波との相互作用を利用した超伝導静磁波素子を提案した。平成14年度の研究計画として、まず静磁波を励起できるペロブスカイト型Mn酸化物の探索を行った。静磁波を伝搬できるものは強磁性誘電体であることが条件であり、超伝導静磁波素子用のMn酸化物は超伝導の生じる低温で強磁性絶縁体領域(FI領域)をもつ必要がある。この条件を満たすものとしてPr_<0.75>Ca_<0.25>MnO_3 (PCMO)、La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3 (LSMO)、Nd_<0.8>Sr_<0.2>MnO_3 (NSMO)があり、これらをレーザーアブレーション法で薄膜化し、誘電特性と磁性特性について調べた。いずれも、キュリー温度以下でFI領域に転移し、30Kで10から20の誘電率を示した。tanδの値はPCMO<NSMO<LSMOの順で、30KでPCMOの3×10^<-3>が最も小さかった。飽和磁化の値はLAMO<NSMO<PCMOの順でPCMOの470Gが最も大きかった。これらの結果より、超伝導静磁波素子用のMn酸化物はPCMOが適切と判断した。 また、フェリ磁性体Y_3Fe_5O_<12> (YIG)単結晶と超伝導体YBa_2Cu_3O_<7-δ> (YBCO)薄膜の圧着構造を用いた静磁波素子の試作を行った。レーザーアブレーション法でYBCO薄膜を成膜し、リソグラフィー技術によりマイクロブリッジ素子に加工した。この素子上部にYIG静磁波伝搬線路を置き、静磁波とボルテックスの相互作用について調べたブリッジなしで外部磁場を加えると、静磁波伝搬線路の伝送特性上に静磁波の伝搬によるピークを観測したが、ブリッジが存在するとこのピークは消滅した、またこの時、マイクロブリッジの電流-電圧特性は変化した、これらの結果は相互作用により、静磁波のエネルギーがマイクロブリッジのボルテックスを駆動するために使われたことを示唆している。
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