第2種超伝導体である酸化物超伝導体中のボルテックスと、強磁性体中を伝搬する静磁波との相互作用を利用した新規デバイス(超伝導静磁波素子)の開発を試みた。平成14年度において、酸化物超伝導体と積層可能なMn系酸化物強磁性体の中でPr_<0.75>Ca_<0.25>MnO_3(PCMO)が最適と判断したので、平成15年度においては、まず酸化物超伝導体YBa_2Cu_3O_<7・δ>(YBCO)とPCMOのヘテロ構造の作製について検討を行った。その結果、SrTiO_3(001)基板上には共にc軸配向のYBCO(001)/PCMO(001)の積層構造を、Al_2O_3(0001)基板上にはYBCO(113)/PCMO(111)のヘテロ積層構造の作製に成功した。さらに、これらの積層構造で作製した超伝導線路やマイクロ波フィルタ素子において、静磁波とボルテックスの相互作用により生じる現象を確認した。一方、PCMO静磁波伝搬線路/YBCOマイクロブリッジ(MB)静磁波素子のプレ実験として行った、Y_3Fe_5O_<12>(YIG)静磁波伝搬線路/YBCO-MB素子の動作実験において、印加磁場のもとで静磁波が励起される周波数帯域で、MBの超伝導-電圧状態転移が静磁波伝搬線路の伝搬特性に変化を与えること、また静磁波の伝搬状態がMBの電流-電圧特性に影響を与えることを確認し、静磁波とボッテックスの相互作用を確認した。PCMO/YBCO素子に関しては、PCMOの膜厚の薄さに起因する静磁波の伝搬損失が大きいことがわかり、PCMOの単結晶育成が望まれる。
|