研究概要 |
環境半導体β-FeSi_2の直接吸収端の圧力効果を始めて明らかにした。試料が0.1ミクロン以下の薄膜であるため,測定した吸収係数が10^5cm^<-1>程度に達し,直接吸収端の測定であることが理解できる。そこで直接吸収端を理論曲線でフィットすることにより各圧力での吸収端を評価した。その結果,直接吸収端の圧力係数は15.9meV/GPaと見積もる事ができた。この値は良く知られたGaAsのそれと比較して1/6以下であり,β-FeSi_2の直接吸収端の圧力係数が小さい事がわかる。もちろん主要な理由の一つは体積弾性率が大きいことであるが,これは3倍程度でありこれだけでは説明できない。そこで価電子帯がFe-Siの反結合充満帯であることに着目すれば,価電子帯頂上が真空準位に向かい移動し,伝導帯の同様の動きを打ち消しあう効果が働いているとの仮説を提案した。これは以前にカルコパイライト半導体でも議論された同様の仮説である。両者はp-d混成が価電子帯を形成している点で類似あると思われる。
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