平成14年度は、Si(100)の清浄表面でのMMSまたはDMSによる反応について、RHEEDを用いて表面構造の変化をその場観察し、同時に表面の原子配列をSTMを用いて詳細に評価した。その結果、Sic(4×4)構造形成時の表面にはc(4×4)と(2×1)構造が共存しており、ラインプロファイル測定によりc(4×4)ドメイン内の格子は収縮しているのに対し、(2×1)構造のドメインのダイマー列間の距離は大きくなっていることが分かった。SiC核はMMSに比べDMSを用いる事でより高密度に形成されることが分かった。さらにDMSを用いた場合、直径5nm程度と小さいSiC核が、c(4×4)ドメインの配列方向と同じ<010>軸方向に沿って配列していることが原子間力顕微鏡(AFM)により観察された。このことからc(4×4)構造形成後に発生するSiC核は、より格子定数の近くなったc(4×4)構造上に形成されるのではないかと推察された。 平成15年度には、本研究補助金で購入したマスフィルタをチャンバーに装着、反応表面から発生するラジカル・分子の同定の実験を行った。その結果、基板に吸着し分解したシリル及びメチル基は殆ど脱離することなくSi及びC原子となり基板内に拡散またはSiC核内に取り込まれ、残りの水素のみが脱離することが分かった。さらにRHEEDおよびSTM観察の結果と併せることによりc(4x4)構造形成前の段階で分子内に含まれるSiはダイマー欠損の修復にも寄与し、C原子は基板表面層内に拡散しc(4x4)構造の形成に寄与することが推察された。また昇温脱離スペクトルからもc(4x4)構造形成時の表面において表面のタイマーのバックボンドにSi-C結合を有する事が窺われ、XPS測定と同様にc(4x4)構造表面層にC原子が拡散していることが確認できた。
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