1.清浄表面を持つ多層カーボンナノチューブ(MWNT)の電界放出パターンの中の隣接する五員環の境界部に観察される輝線の数は印加電圧の増加に伴って増加し、輝線の間隔は印加電圧の1/2乗に反比例して変化することが判った。 2.ヤングの干渉縞の計算機シミュレーション法を確立し、干渉縞の開口スリット間距離依存性、加速電圧依存性を調べたところ、上記1.の実験結果をよく説明できた。この結果は、輝線が2個の五員環から放出された電子線の干渉の結果生ずることを強く示唆する。 3.MWNT先端の清浄な1個の五員環から放出された電子ビームの電流電圧特性と放射角電流密度を測定した。放射角電流密度の測定値と1個の五員環の幾何学的寸法から推定した換算輝度は、53nAの放出電流値において、およそ5.6×10^9A/(m^2srV)に達した。これはJonge等により報告されている1本のMWNTに対する値より一桁あるいはそれ以上高い。更に異なる4つの試料についての印加電圧-1、500Vでの放射角電流密度はいずれも約15μA/srであった。この値は、タングステン針先端に接着された一本のMWNTについて、印加電圧-319Vで報告されている値と同程度である。また、換算輝度の推定値は、従来の高輝度電子源のそれよりも、1桁〜2桁高い値であった。 4.電子ビームの干渉性を利用したミクロな電磁場の直接観察法を開発した。本方法は1個の電子線バイプリズムで簡単に観察が可能であるため、極めて有用な方法である。
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