微細加工に用いられるガリウム集束イオンビーム装置には、加工表面を走査し、放出二次電子を輝度信号にして走査像を形成する、走査イオン顕微鏡機能(SIM)があり、材料コントラスト、チャネリングコントラスト、表面形状コントラスト、電圧コントラストなど多くの点で、従来の走査電子顕微鏡(SEM)に比べて優れている。本研究はこのSIM像のSEM像との違いの原因を明らかにし、ユーザーの経験に頼りがちな加工表面観察の詳細な解析を支援するソフトウエアの開発を目的として進めた。 平成14年度、ダイレクトシミュレーションモデルとガリウムイオンの固体内電子励起断面積を用いた計算機シミュレータを開発し、材料コントラスト、情報深さと横方向広がりの違いの原因を明らかにした。平成15年度は、さらにシミュレータを改良し、凹凸表面の例として半円筒モデルとステップモデルを用いて表面形状コントラストの違いを調べ、SIM像がSEM像に比べてシャープに見える原因を明らかにした。 平行して、半導体デバイスに使用される代表的な絶縁物の二酸化珪素について二次電子像を評価するシミュレータを開発した。さらに、各場所での二次電子強度の表面分布から二次電子像を再構成するプログラムを作成し、これまで開発したシミュレータと組み合わせてSIM像観察による表面解析を支援するソフトウエアを作製した。 また、これら、科研費補助金による二年間の成果を基に、ケンブリッジ大学出版から発行予定の「Focused Ion Beam Systems : a Multifunctional Tool for Nanotechnology」(ed.N.Yao)の第5章Imaging using electron and ion beamを執筆した。
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