研究課題/領域番号 |
14550030
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
作道 訓之 金沢工業大学, 工学部, 教授 (20267719)
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研究分担者 |
林 啓治 金沢工業大学, 工学部, 助教授 (30281455)
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キーワード | PET / プラズマ / イオン注入 / 改質 / アモルファスカーボン / ダイヤモンドライクカーボン / ガス透過率 / ラマン分光 |
研究概要 |
昨年度の基礎的な実験研究とATR(全反射)FT-IR(フーリエ変換-赤外分光)やレーザラマン分光により、PET (polyethylene terephthalate)に窒素イオンを注入することでPET分子が分解して水素が抜けてゆき、残った炭素がアモルファス状になることが分かった。つまり、いわゆるダイヤモンドライクカーボンが形成されていることが確認できた。これらの基礎データをもとに、今年度は、1.PETシートへの窒素イオン注入量と、酸素や炭酸ガスに対するガスバリアー性の改善効果の関係を鯛べた。0.1mm厚のシート状PET試料に-10kV、幅5μs、繰り返し周波数1kHzのパルス高電圧を印加して行ったプラズマイオン注入では、ドーズ量が10^<15>/cm^2オーダー以上でガスバリアー性が急激に向上することが分かった。これは、レーザラマン分光によるダイヤモンドライクカーボンの形成と強い相関があることが明らかになった。ドーズ量6x10^<16>/cm^2では酸素および炭酸ガスの透過率はそれぞれ1/6と1/9に低下した。このガスバリア性改善効果の値は、PET試料の表面わずか100nm深さまでの改質だけで生じたものであり、改質層だけのガス透過率は数千分の一になっていることが、簡単なモデル計算からわかった。1ミクロン前後の薄いPETシートに対しては大きな効果を持つことが期待できる。 2.また具体的に、PETボトル内面へのイオン注入を実現するためには、通常のプラズマイオン注入(試料または被処理物に負の高電圧パルスを印加する)とは異なり、ボトル内に挿入した電極に正のパルス高電圧を印加するという新しい方法(特許申請中)を使う必要がある。このため、既存装置を改良して、実際のPETボトル内面へのイオン注入実験を行った。その結果、シート状試料のときと同様に波長532nmのレーザラマン分光測定を行った結果、波数1100cm^<-1>から1900cm^<-1>にかけて、グラファイト(ラマンシフト1550cm^<-1>)のあたりにメインピークを持つ非対称のブロードな分布が得られ、ダイヤモンドライクカーボンの形成が確認された。新しい方法によってもイオン注入による改質効果があることが確認できた。
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