本研究では、サーフアクタントを用いた表面改質により、ナノ構造を形成しその非平衡安定形状の解析とファセット構造の解析を行った。さらに、サーフアクタントを用いないで基板表面の異方性を利用したナノ構造の形成も行い、この時に出現するファセット構造の解析も行った。これらを通じてナノ構造におけるファセット構造と非平衡安定形状の相関について検討を行った。 主な研究成果は以下の通りである。 1.水素終端したシリコン表面上での銅ナノ構造 シリコン表面には化学的に活性なダングリングボンドが数多く存在するため、水素を用いて活性度を下げ、その上で、銅ナノ構造の作製を行った。形成されたナノ構造は、低い基板温度では、β相シリサイドであり、形状としては三角形状であった。この時形成されたナノ構造はファセットと有している。数多くのナノ構造について傾斜角を測定した結果、{554}、{110}、{112}、{114}または{115}といったファセットであることが明らかとなった。一方、基板温度が上昇すると、低温で見られた三角形状のナノ構造が減少し、新たに六角形状のナノ構造が多く形成されるようになる。これは、基板温度の上昇により、安定に存在しうる合金相が変化したためであると考えられる。このように、合金を形成するようなナノ構造では、その組成により安定形状に変化見られることが明らかとなった。 2.微傾斜シリコン表面上でのゲルマニウムの成長 微傾斜したシリコン(ここではシリコン(113)面を用いた)表面上でのゲルマニウムの成長過程で形成されるナノ構造について、実時間での動的な観察が可能な低エネルギー電子顕微鏡を用いて実験を行った。このような微傾斜基板では基板表面の異方性により、ナノ構造を形成することができる。その結果ある温度領域でのみ三次元クラスターの形成とそれに引き続く三次元島の形成が起こることが明らかとなった。それより基板温農が上昇すると三次元島のみが形成される。これは非平衡状態から核形成が起こるとき、表面拡散長が用いた基板のテラス幅と同程度のときのみ三次元クラスターを形成するためであると考えることができる。また、その後に形成される三次元島はファセットを有しており、低速電子回折パターンの詳細な解析により、{15x}(xは整数)なる指数であることがわかった。
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