本研究者は、これまで光波による分子配向・機能制御と光情報処理応用をキーワードに、(1)光導電性液晶中の光空間電界による分子再配列型フォトリフラクティブ効果、(2)色素ドープ液晶の巨大非線形光学効果、(3)光架橋性高分子液晶の軸選択的光架橋による熱安定分子配向制御、などの研究を行ってきた。液晶材料は、分子配列が協調的に起こり、マクロ年巨大誘電率異方性を有するため、外場に対して効率的に反応し、わずかな分子配列の変化で大きな屈折率の変化が誘起される。これらの液晶系材料特有のユニークな諸現象と、実時間ホログラム光学系、非線形フーリエ変換光学系、熱安定分子配向と光回折素子、といったキーワードを組合せることによって、実時間光情報処理や従来にない高機能光デバイスへの応用を実現できる可能性がある。本研究は、このような背景のもと、本研究者が行ってきた上記の光機能性液晶の諸効果を光情報処理分野に応用することを意図して計画された。さらに、本研究では、現在までに見出されている光波制御分子配向制御について、ナノレベルを標榜した制御技術の検討を同時に目指した。これらの検討の結果、(1)実時間ホログラムによる光画像の空間周波数実時間選択再生の実証、(2)非線形フーリエ変換光学系による画像の明暗反転実時間処理の実証、(3)高分子との複合化による分子再配列型フォトリフラクティブ効果の高効率化とメカニズム解明、(4)液晶への光制御型凹凸レンズの形成とメカニズム解明、(5)光架橋性液晶高分子への偏光ホログラム形成と偏光変換回折素子への応用の実証、といった成果を上げることができた。これらの諸実証によって、光波の情報処理への高度応用にとって、液晶の光波分子配向制御技術が大きな役割を果たすことが示された。
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