本年度は、最近提案した「ガウス型フィルターを用いた位相回復法による物体再生」の有効性を、実際の光学実験により示すことを目的としていた。実験では、レーザーのガウスビームの振幅分布をガウスフィルターとして用いて、直径1mmの凸レンズ物体または直径0.25mmの光ファイバー物体を照明し、その回折光強度のデータから、パーソナルコンピュータによって、光の位相と、さらに物体の位相分布を再生することを試みた。その結果、物体を透過した光の位相分布が、レーザー光の波長の1/10〜1/4の精度で再生できることをがわかった。次に、この方法をさらにX線などの短波長の光にも応用できるように改良することを試みた。X線の場合、ガウスビームの代わりの照明光をどうするかという問題がある。今回は、円形開口のフラウンホーファー回折光の中心部分を用いること考え、波長0.6nmの軟X線の場合について計算機シミュレーションを行った。その結果、円形開口回折光の中心部分の約1/3の部分を利用すれば、ガウスビームを用いたものとほぼ同じ結果が得られることがわかった。さらに、今まで2次元物体に対して必要であった3回の強度分布測定を2回にする新しいアルゴリズムを考案し、計算機シミュレーションで有効性を確認した。今後は、円形開口回折光照明を用いる方法において雑音の影響を抑えるため照明光の光量を増やす方策について検討する予定である。また、ガウスビームのような特殊な照明光を用いるのではなく、物体からの回折光の観測面上でスリット開口をスキャンさせる新しい方法についても、理論解析および計算機シミュレーションによる検討を行う予定である。
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