研究概要 |
本年度は、特にSF_6の分解生成物がオゾンを破壊していることについて、前年度に購入し整備したCO_2レーザーを用いて実験を行なったので、その成果について報告する。 昨年度までは、この光音響分光実験の光源として、パルス幅が250ns,300mJのTEA・CO_2レーザーを用いていたが、光音響倍号強度がかなり変動したため、本年度は30μs,40mJの縦方向励起レーザーを用いた。光音響セルは9cm長で音波の往復時間は250nsであるので、シンクロスコープ上で明確に信号波形を観測できる。 先ず、酸素O_2ガス260Torrを30,60,90分間放電させて、9.6μm分枝でのオゾンの吸収スペクトルの特有の谷の深さを観測して充分にオゾンが生成されていることを確認した。 次に、オゾン層破壊物質としてよく知られているフロンガスR-22を酸素に10,30Torrだけ混ぜて、同じく放電させて谷の深さを測定した。その結果、谷の深さが浅くなり、フロンがオゾン生成を阻害していることが確認できた。 更に、フロンと同様に、酸素にSF_6を混ぜて放電させて谷の深さを測定した。特に90分間放電させたときは、9.6μm分枝の長波長側に新たに鋭い吸収スペクトルが現れると同時に、谷の深さがかなり浅くなった。このことは遊離したフッ素の外にSF_2O_2,SF_2Oなどの分解生成物がオゾン生成を阻害していることの確証になると考えられる。 以上のように、安定なレーザーを用いたことにより、昨年度に比べて精度の高い実験を行なうことができた。従来は影響ないと言われていたSF_6も超高層では紫外線により解離されてオゾン層破壊に影響を与える可能性があることを基礎的実験で証明できたと考えている。
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