走査型プローブ顕微鏡(SPM : Scanning Probe Microscope)は極細なプローブを利用し、表面とプローブ先端との間に働く様々な物性をナノメートルスケールという高い空間分解能で検出し、その表面分布像を取得できる顕微鏡である。SPMはまた、表面の観察に用いられるのみではなく、表面のナノスケール加工にも応用されるようになってきており、現在様々なアプローチで盛んに研究が進められている。本研究ではマイクロガラスチューブを加工したマイクロピペットプローブを用い、様々な化学薬品溶液をマイクロピペット内に含むことで試料表面の任意な局所位置での薬品滴下及び注入等を可能にする新しいナノスケールでのケミカル反応可能なプローブ顕微鏡システムの開発を行うことを目的としている。平成14年度の実績としてシステムの作製を行った。具体的には、これまでに我々が行ってきた走査型プローブ顕微鏡の測定法や超精密加工法の基礎技術を利用することにより、マイクロピペットプローブを有するプローブ顕微鏡を開発し、表面加工への応用を行った。ガラスチューブを熱引き等の加工法を用いてマイクロピペットプローブを製作し、走査型プローブ顕微鏡のプローブとして用いるシステムを試作した。このマイクロピペットプローブは表面との原子間力等の力学的相互作用により高さを位置決め制御するがその検出制御機構としてマイクロピペットプローブを横方向に微小振動させて探針先端と試料表面のシェアフォースを利用し、そのダンピングから制御する方法を用いた。プローブの振幅減衰の検出にはレーザダイオードを用いた光学的検出法やチューンフォーク型水晶振動子を用いた圧電的検手法を用いた。システムを製作後、マイクロピペットプローブに含む試薬溶液の検討を行い、表面加工の基礎実験を行った。
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