走査型プローブ顕微鏡(SPM : Scanning Probe Microscope)は極細なプローブを利用し、表面とプローブ先端との間に働く様々な物性をナノメートルスケールという高い空間分解能で検出し、その表面分布像を取得できる顕微鏡である。SPMはまた、表面の観察に用いられるのみではなく、表面のナノスケール加工にも応用されるようになってきており、高密度メモリや半導体の次世代デバイスにおけるリソグラフィー技術の開発など現在様々なアプローチで盛んに研究が進められている。 16年度は昨年度までに作製したシステムをベースにマイクロピペットプローブからの物質滴下によるナノスケール構造物製作の基礎実験を行い、局所エッチングや金属イオン電解液を含む溶液を用いた局所めっきのナノスケール加工を行う。加工再現性向上のためピペットプローブが表面に対して正確に垂直に位置させるポジショニング機構を構築させるなど、ピペットプローブを用いた加工が安定するようなシステムを完成させた。さらに電気泳動法を用いた加工を実現させることによりナノ微粒子の堆積やDNAといったバイオサンプルを局所的に分配できるシステムへと発展させた。連続的なドット加工やライン加工を実現することができた。今後、これらの装置と他のSPM表面測定手法の複合化装置への発展により本加工手法における更なる応用範囲を拡大することができ、局所領域の着色加工や化学反応による局所発光現象などをナノスケールの高分解能で観察することを可能となる。
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