研究概要 |
臭い識別センサの実現を目的として,種々の臭い分子とガスセンサとの反応過程のシミュレーションを行い,実験結果との比較を行ってきた。平成14年度は主に蟻酸(HCOOH)や酢酸(CH_3COOH)等のカルボン酸分子とガスセンサのとの反応をシミュレーションと実験の両面から調べた。MOPAC97を用いた分子軌道計算により,カルボン酸分子をSnO_2クラスターに近づけた際の全体の生成熱やクラスター表面の電荷の様子を観察した。酢酸分子をクラスターのc軸方向から接近させた際の系全体の生成熱の変化では,生成熱は酢酸分子をクラスター表面との距離が〜5Å付近で最小値となっており,酢酸分子はSnO_2表面からこの程度の距離で吸着されることが示唆された。またこの値は同様の計算から求めたメチルアミンやエチルアミン等アミン系(-NH_2)のガスの距離に比べて小さくなっている。数十ppmまでの濃度のこれらのガス雰囲気中でガスセンサの感度を実験から求めると,酢酸に対するガスセンサの感度はアミン系のガスに比べて高くなっており,センサ表面での分子の吸着距離がセンサ感度に影響していることが伺われた。他方メタノールやエタノールについてのシミュレーション結果は吸着距離が酢酸とほぼ同じであることを示しているが,メタノールやエタノールガスに対するガスセンサの感度は酢酸より高く,吸着距離以外の要因も関与していることが示唆された。今後多方面からのさらなる検討が必要と考える。
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