研究概要 |
大強度高エネルギーの陽子加速器やそれに付属する各種実験施設の設計には、二次放射線の漏洩や透過の評価が大きな問題となる。本研究は、高エネルギー中性子場を用いて、遮蔽簡易式の減弱距離等のパラメータや遮蔽計算コードの精度検証を行える遮蔽ベンチマーク実験データを提供することを目的としている。 エネルギー加速器研究機構(KEK)の核破砕中性子源施設KENSは、500MeV陽子(5μA)を厚いタングステンターゲットに当てて中性子を生成している。このターゲットから下流2.5m先には中性子照射室があり、ターゲットから前方に生成した高エネルギー中性子がコリメータを通して導かれている。本研究では、ビーム出口から4mを普通コンクリートで全て埋め、遮蔽体系内のビーム軸上には、40〜80cm厚毎に検出器や照射試料等をターゲットステーション上から挿入できる孔(スロット)を設け、その孔に同じ組成のコンクリートで製作された遮蔽プラグを差し込める構造とした。 ビーム出口直後からコンクリート4m厚までの8つのスロットに放射化検出器としてビスマス、アルミニウムおよび金の箔や円盤を設置して照射し、遮蔽体系内の中性子強度分布を測定した。照射終了後、放射化検出器に生成した放射性核種からのγ線をゲルマニウム検出器で測定し、その反応率を求めた。 アルミニウムにおける^<24>Na,^<22>Na,^7Be、ビスマスにおける^<210-x>Bi(x=4〜9)および金における^<198>Auの生成率および、それらのコンクリート遮蔽体中での減衰分布を得た。熱中性子の反応により生成する^<198>Auおよび約5MeV,23MeV,62MeVをそれぞれ閾値とした反応で生成する^<24>Na,^<206>Bi,^<201>Bi等の生成率分布から、広範囲のエネルギーで中性子強度の減衰を観察することができた。また、遮蔽体の照射面から4mの最大厚に亘って、中性子強度で最大7桁に亘る減衰分布を実験値として得た。本結果は、遮蔽深層透過計算の検証に非常に有用なベンチマーク実験データである。
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