研究概要 |
前年度は独自の集中質量型プローブを用いた安定なナノ分解能高感度弾性マッピング(弾性分布の画像化)を実現するため,動作不安定要因の抽出およびその改善を行った.本年度は,前年度に続き安定動作のさらなる向上を目的に探針の耐磨耗被覆材について検討した.また操作性向上のための検討を行った.さらに弾性係数の定量評価の検討を行った.以下に結果をまとめる. (1)探針先端形状が磨耗等の損傷により容易に変化しないようにコーティング材の選択は重要である.前年度まではコーティング材としてW_2Cを用いていた.これは良好な耐磨耗性を有しているが,探針母材のシリコンとの接合強度が弱く,容易に剥がれ落ちてしまう.本年度では代替品としてTi/Ptコーティング探針を採用した.これによりコーティング剥離の発生し難くなり長時間に渡り安定な接触共振が得られた. (2)集中質量をカンチレバー本体の10倍程度のプローブにおいても良好な弾性分布画像が得られた.これにより理論上最高感度を持つ質点系モデルと同等の性能を持つ集中質量型プローブを実証できた. (3)各社の原子間力顕微鏡に対して,原子間力超音波顕微観察できるように,弾性分布画像取得用高速RMSコンバータを試作した.また負荷試験用圧電アクチュエータを試作した. (4)結晶面が互いに異なる2種類のシリコンウエハの表面をKOH溶液でエッチングした標準表面を用いて,弾性係数の評価精度を調べる方法を考案した. (5)ハードディスクの磁性膜表面,PZT薄膜表面について,昨年度よりの鮮明な弾性分布画像を取得することができた.弾性分布の画像では,表面形状には現れない組織,材質等の場所的な違いを反映した表面性状を数十ナノメートルの分解能でみることができた.
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