研究概要 |
子供の拘束方法はチャイルドシートによって異なり,製品によっては衝撃時に子供の腹部や股間が圧迫されると考えられるものも見られる.現在,チャイルドシートの設計では衝突ダミーが用いられている.衝突ダミーでは衝撃時の人体挙動を評価することが可能であるが,胸郭や腹部の形状・特性が生体とは異なっているため,チャイルドシートの拘束による胸部,腹部への圧迫を評価することができない. 本研究では,子供(3歳児)の有限要素モデルを開発し,チャイルドシートによる子供の拘束方法を評価することを目的とする.本年度は有限要素モデルの開発研究を中心に行なった.子供の有限要素モデルの形状は,米国運輸省による3歳児の人体計測値(形状,質量,慣性モーメント)の研究結果を基に,成人の有限要素モデルのスケーリングによって作成した.骨の材料定数は文献に基づき3歳児の値を設定した.軟部組織の材料定数は大人と同等とした.この有限要素モデルに対して,衝突ダミーの校正試験シリーズで最も重要である胸部インパクト試験を実施した.その結果,3歳児有限要素モデルは胸部衝撃に対する応答要件を満たしていることを示すことができた. 腹部への圧迫が大きいと予測されるインパクトシールド型チャイルドシートについても有限要素モデルを作成し,これに3歳児モデルを搭載して衝撃解析を行なった.インパクトシールドによって,腹部や浮遊肋の応力集中が発生することがわかった. 今後,拘束を行なう上で重要な骨盤の形状をより現実に近いものとする予定である.また,頭部や頸部の校正試験を実施し,生体忠実性の高い有限要素モデルとしていく.さらに,5点式ハーネス式のチャイルドシートモデルを作成することによって拘束方法と腹部傷害の関係を検討し,腹部傷害リスクの評価方法及び傷害リスクの低い拘束方法を提案する予定である.
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