研究概要 |
高張力ポリ乳酸繊維の表面処理法を改善して,3molのNaOH水溶液を用いたところ,従来の方法に対して処理時間が1/30に短縮できた.また繊維表面のディンプルが300nm以下に微小化することで,繊維強度も増大したうえに,樹脂との接着性が改善され,作成した複合材の強度は複合則に達した. 本材料を37℃の生理食塩水に浸漬あるいは骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を用いた培地といった,in-vitroの環境での生分解を行った.このときの樹脂の物理的な特性の変化を示差熱走査熱量計にて行った.その結果,生理食塩水中に浸漬したものは2週間では無処理材とほとんど変化がないが,2ヶ月後には少し分子量が低下して結晶化度が大きくなった.さらに融解熱量も増しており,アモルファスな部分から,加水分解が始まっているものと思われる.強度も5ヶ月後には1/3以下となった.これに対して骨芽細胞培地に2ヶ月置いた試料は,分子量が5%に低下し,融解熱量も大きな値を示した.また結晶化度も非常に大きくなっており,明らかに大部分が分解して,残りは結晶部分だけになったものと思われる.そして強度は2ヶ月でほぼゼロとなった. 以上のことから,体温の生理食塩水中では加水分解によって生分解するが,ほぼ5ヶ月間が必要なこと,また,骨芽細胞がある環境下では生分解が2ヶ月以内に早まることがわかった.この分解時間は体の部位により異なるものの,骨折後の骨生成による治癒時間と大差がなく,本材料は生体材料として使用可能な分解速度を有しているものと思われる. また本材料に前処理滅菌法として紫外線や高温高圧蒸気などを試したところ,EOガスによる処理で強度の低下がみられかった.また残留EOは真空処理で除去できて,その後の細胞の定着にも問題なかった.
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