研究概要 |
前年度開発した直接引張型ホプキンソン棒法を用いて、代表的な鉛フリーはんだ材であるSn-3.0Ag-0.5Cuはんだ材の高速引張試験を行い、ひずみ速度が破壊形態に及ぼす影響について詳細に調べた。なお、比較材として従来のSn-Pbはんだ材についても詳細に検討した。その結果、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ材では準静的引張試験後の高倍率破面写真から破面全体に延性破壊の特長であるディンプルが粒内に確認でき,すべりによる空孔合体型の破壊が支配的であることがわかった。ただし,ひずみ速度1.2s^<-1>の準静的引張試験後の破面はひずみ速度1.2×10^<-2>s^<-1>の破面と比較してディンプルが小さくなっていた。したがって,同じ粒内延性破壊であっでもディンプルの大きさはひずみ速度に依存するものと考えられる。また,高倍率破面写真からファセットの面にへき開段が多数確認できた。したがって衝撃破壊が一つのへき開面でだけでなく平行ないくつかのへき開面で同時に起こっているものと考えられる。一方、Sn-Pbの準静的引張試験後の破面写真からSn-3.0Ag-0.5Cuはんだ材と同様にディンプルが粒内に確認できたが,同時に粒界にも存在することがわかった。このため,Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ材と異なり,Sn-Pbはんだ材ではチゼル状の破断には至らなかったものと考えられる.また,高ひずみ速度域における破面ではほとんどが粒界延性破壊であり,準静的引張試験後の破面と比較して結晶粒界に現れているディンプルが小さく浅いことがわかった。 以上のことより、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ材は低ひずみ速度域で粒内延性破壊,高ひずみ速度域で粒内脆性破壊(へき開破壊)となる。一方,Sn-Pbはんだ材は低ひずみ速度域で粒内延性破壊と粒界延性破壊が混在しており,ひずみ速度の上昇に伴い粒界延性破壊の破面占有率が多くなる。そして,高ひずみ速度域では粒界延性破壊が支配的となることがわかった。
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