シリコンとガラスエポキシ基板を異方性導電樹脂(ACF)で接合した、フリップチップ接合を対象とし、シリコンチップとACF、基板とACFの接合強度の定量的な評価を行った。そのために、ACFとシリコンチップあるいは、基板の間に予備はく離を入れた試験片を用いたはく離試験法を開発し、はく離限界荷重の測定を行った。さらに、以前の研究で開発した異方性異種材界面き裂の応力拡大係数解析ソフトを用いて、定量的なはく離強度の評価を行った。また、樹脂接合では、シリコンと樹脂といった線膨張係数の著しく異なる材料が接合されるため、温度変化に伴って、大きな熱残留応力が発生する。そこで、接合部の残留応力測定装置を開発し、これにより残留応力の影響を定量的に評価した。 その結果、測定したはく離強度は、試験片の大きさや形状に依らない普遍的な性質を持つ支配パラメータとして機能することが確認された。この評価手法によると、温度上昇に従い、ガラス転位点付近で、はく離強度が著しく低下し、はく離モードも温度上昇に伴って、モードI(開口)支配から、モードII(せん断)支配に移行する傾向が強いことが確認された。 次に、電極を配置したシリコンチップとガラスエポキシ基板をACFで接続した、模擬フリップチップを用いた吸湿リフロー試験を行い、上述のACF接合強度と耐吸湿リフロー性能の比較を行った。恒温・恒湿槽内において、模擬フリップチップに一定時間吸湿させ、その後半田リフロー温度に曝して、チップに配置したデイジーチェーン接続部の導通抵抗を測定したところ、上述のACF接合強度と耐吸湿性能には、明らかな相関があることが判った。 今後、フリップチップの吸湿解析を行って、半田リフロー時の発生蒸気圧を予測し、はく離発生予測を行う手法を開発する予定である。本研究課題で開発された手法は、ACF接合部の耐久性設計への利用が期待される。
|