研究概要 |
海洋構造物、プラント部材や医療材料などの保護コーティング膜として、今後、大いに期待される湿式・高温環境下での実用化に対しては、密着性は勿論のこと耐食性や耐酸化性の問題は避けられないのが実情である。本研究は、過酷環境下対応し得る環境調和型保護コーティング膜の実用化を図るために、真空蒸着とイオン注入を融合したイオンビーム援用蒸着法により3元系窒化物(Ti, Al)N薄膜を作製し、その密着性、耐食性や耐酸化性向上を目指した信頼性評価に関する研究を行うことを目的としている。 初年度の平成14年度は、AlとTの蒸発原子数の比である蒸発比および両者の和と基板に照射するNイオン数の比である輸送比をそれぞれ変化させて(Ti, Al)N薄膜を作製し、その形態、組成・構造や特性評価を行った。その結果、得られた膜は極めて平坦であり、輸送比および蒸発比を増加させると断面は柱状組織から微細組織へ変化する。薄膜の結晶構造は、輸送比および蒸発比を増加させるとNaCl型構造からウルツ鉱型構造へ変化し、2相構造を示す遷移領域が存在する。Ti-2p_<3/2>およびAl-2pの束縛エネルギに化学シフトが認められ、輸送比が増加させるとTiに比べてAlのち窒化が優先する。また、いずれの輸送比においてもAlやNがリッチな薄膜が成膜される。薄膜のヌープ硬度は上述のNaCl型構造からウルツ鉱型構造への遷移領域において高い値を示すことが明らかになった。 なお、次年度は密着性、耐食性や耐叢化性向上を目指した信頼性評価に関する研究を行う予定である。
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