研究概要 |
X線応力測定法は材料強度研究に広く使用されている.現在のX線応力測定法はsin^2ψ法による方法が最も一般的である.sin^2ψ法は複数のX線入射角を設定して回折強度曲線を測定し応力を得る方法で,得られる応力は設定した方向の応力のみであるため測定効率が良い方法とは言い難い. そこで本研究では一つのX線入射角で得られる回折環に対して複数の回折環放射方向の回折強度曲線を測定しその回折角から重回帰分析によりX線照射面積内の平面応力成分(σ_x,σ_y,τ_<xy>)を同時に算出することが可能であると判断し,数値シミュレーションを行って本方法の可能性を検証した.その結果,一つのX線入射角で得られる回折環から平面応力成分(σ_x,σ_y,τ_<xy>)を求めることは可能であるとの結論を得た.そして本年度の第二段階として,この測定原理に基づき,回折環放射方向の回折強度曲線を得るために16個の位置検出型比例計数管PSPCを用いて直接測定する方式の装置を試作した.またX線応力測定システムの開発ということからPSPCの試作・精度の確認,信号処理および応力算出のためのプログラムの作成を同時に行った. 開発した装置により平面応力成分の測定を行い,応力測定精度に及ぼす影響因子について検討した結果,迅速で効率的な応力測定が行えることを確認した.また測定精度についてはσ_x,τ_<xy>についてはsin^2ψ法で得られる応力値と大きな差異はなく良好な測定精度が得られた.しかしσ_yについては他の2応力成分に比して測定精度が若干劣り,次年度以降,ハードおよびソフトの両面から改善する必要がある.
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