本研究は、形状自由度が高くかつ高能率な微細加工を実現するために高静水圧環境を利用した硬脆材料の無欠陥切削加工方法を検討することを目的としている。Bridgemanの研究によると高静水圧下では脆性材料でも延性が増し大きな塑性変形が可能であることが知られている。そこで本研究ではこの原理に基づいた無欠陥切削加工を実現するための高静水圧環境切削加工実験装置を開発し、その切削加工特性を検討する。 本年度は昨年度開発した高静水圧環境切削加工実験装置を用い、ソーダガラスの切削実験を行い、高静水圧下での切削特性を検討した。このためにまず4000気圧中で切削力が測定できる切削動力計を開発した。工具として単結晶ダイヤモンド工具を用い、スライドガラスの端面切削を行った。切削痕をレーザー顕微鏡で観察することにより、静水圧により延性-脆性遷移挙動が変化し、加工欠陥の発生が抑制されることを確認した。さらに臨界切削厚さを測定し、静水圧に対する臨界切削厚さの変化を定量的に明らかにした。さらに種種のすくい角の工具においても同様に切削実験を行い、どのすくい角においても静水圧による加工欠陥抑制効果があることを確認した。 次に、高静水圧下での切削主分力、背分力を測定した。この結果、高静水圧環境下では見掛けの切削力が増大すること、また摩擦角(すくい面摩擦係数)が増大することが判った。 一方、切削機構を明らかにするには切り屑の観察および剪断角の測定が必要である。そこで本装置を改造し、高静水圧環境下で二次元切削を行い、それを光学的に拡大し観察することを試みた。ピエゾアクチュエータを用いた二次元切削実験装置を開発し、それに対物レンズ、白色LEDの光源を組み付け、高圧チャンバー内に設置した。それをサファイヤの窓を通して観察し、接眼レンズを通してビデオカメラで観察するシステムを開発した。本装置を用いて予備実験を行ったところ、圧力媒体として用いたタービンオイルの屈折率、透明度の問題で高倍率での観察は出来なかった。今後の課題として検討する必要がある。
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