研究概要 |
現在,冷間ダイス鋼SKD11は耐摩耗性や耐熱性に優れているため,金型材料として最も多く使用されている.ダイス鋼を放電加工すると,金型の表面には加工時の急熱急冷により母材とは異なる高硬度の白層が形成される.加工条件によっては,この白層内にクラックや微小穴も存在する.この加工変質層は金型の寿命に有害な影響を与えるため,放電加工後に除去することが望ましい.現状では,加工変質層は手作業のみがき工程によって除去されている.しかし,この工程は金型製作の時間短縮や低価格化に大きな支障を及ぼす. そこで,機械的な除去に代わる新しい表面改質法として溶融を伴うレーザ表面改質法を提案する.これはレーザビームを熱源として用い,放電加工による変質層を溶融,凝固させることで欠陥をなくし,同時に加工面あらさを低減させる方法である.この方法により,金型製作におけるみがき工程の簡略化が期待できる.本研究では50x50mm^2の大きさをもつ3次元形状の金型にレーザビームを照射する.この表面改質には1kW,連続波の炭酸ガスレーザを用いた.表面酸化を防ぐために,アルゴンガスをレーザビーム軸に沿って金型に流している.出力800W,送り速度200mm/min,焦点はずし量5mmおよびビームステップ幅1mmの条件で,レーザビームは放電加工面に照射された.その結果,以下の結論が得られた. (1)放電加工によるクラック,微小穴などの表面欠陥は表面層の溶融によって解放される.次に,レーザ照射後,均一に分布する凝固層を得ることができた.結果として,放電加工面を改質する新しい方法を実現することができた. 約25μmRyの放電加工面のあらさは,重ね合わせレーザ処理によって2〜5μmRyへと減少させることができる.重ね合わせ処理されたレーザ処理面では表面あらさの増大は見られなかった.
|