研究概要 |
本年度は工具・被加工材間の摩擦制御の立場から研究を行った.微細形状断面を有する押出し材の加工法の実現の為の最も重要な課題は,工具表面改質により,ダイス表面の摩擦をいかに下げるかである. 適用可能と考えられる約10種類の硬質薄膜に対して,その基礎的特性を明らかにした.さらに高温(180℃)での圧縮回転式摩擦試験を行った.相手材を1197AL合金とした場合,PCVD法による,TiA l N・4層膜が裁量の摩擦特性を示した.一般に膜厚が大きくなる程,摩耗深さが小さくなる傾向が見られた.TiA l N膜の場合の膜厚と摩耗深さの関係を詳細に調べた.すべり距離が約10kmまでは膜圧の影響はほとんどみられないが,10km以上になるとその差が明確に現れる.膜厚が約3μm以上になると,膜厚による違いが現れないまま,摩耗深さが増大していく.現在まで得られた結果から,PCVD法によるTiA l N4層で,膜厚3μm程度が最適であるといえる. 被膜の摩耗形態の観察も行った.その結果,摩耗の進行のトリガーは暇苦衷に存在するわずかな欠陥部(キャビティ)に被加工材が疑着することであることが分かった.均質な被膜構造と平滑な表面仕上げの必要性が再確認された. 圧縮回転式試験法より,摩擦条件が厳しく,実加工の接触条件をより具視し得る引抜き形摩擦試験機を用いることとし,工具設計および表面改質法の検討も行い,主要試験部の製作は終了した.本試験機を用いて,耐剥離性評価法の検討も行い,あらたな試験法の提案を行う,押出し条件の検討を行った.この結果,膜厚が大きい程,工具寿命が長いという結果が得られ,基礎試験による摩耗特性の傾向と相関がみられた.
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