研究概要 |
ダイヤモンドは非常に高硬度であるため,その加工は非常に困難である.通常は,水平に回転させた鋳鉄円板にダイヤモンド粉と油を塗布し,ダイヤモンド粉でダイヤモンドを研磨する方法が用いられている.この方法では,ダイヤモンドを平面などの単純形状に研磨することはできるけれども複雑な形状に仕上げることはできない.さらに,研磨が不可能なダイヤモンドの結晶面が存在し,加工能率も低い. ところで,ダイヤモンドを工具として鉄系材料に対して切削加工を施すと,ダイヤモンドが著しく摩耗してしまう現象は良く知られている.本研究は,この現象を逆に利用して,ダイヤモンドに3次元マイクロ加工を行う方法を開発することを目的としている.旋盤チャックに炭素鋼の丸棒を取り付け,工具台にダイヤモンドを取り付ける.丸棒の表面には,雄ネジ形状が施してある.送り量をねじのピッチと同じ値にして外周切削を行うことにより,ダイヤモンドの特定の部分でネジ山を切削することになる.この加工により,ダイヤモンドの逃げ面に相当する面が摩耗し,ダイヤモンドに雄ネジ形状を転写することができる. 本年度は,本加工の進行状態について,主に検討を行った.切削動力計をダイヤモンドに取り付けて加工中の切削抵抗を測定し,炭素鋼のネジ山形状を測定することにより,ダイヤモンドに施された加工深さの進行を検討した.加工開始直後は,ダイヤモンドの切刃に相当する部分で通常の切削加工が行われている.この間ではダイヤモンドに対する加工は行われない.数秒で切刃が摩耗するため,切削抵抗の値は高くなる.その後,ダイヤモンドの摩耗が始まり,ダイヤモンドに対する加工が行われる,このときには,単位時間当たりの加工量はほぼ一定である.今後,この結果を利用して,さらに効率的にダイヤモンドを加工する条件を検討する予定である.
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