研究概要 |
AlTiNコーティング工具によって、焼入れ金型材料,耐食性金型材料のエンドミル加工を行って,その摩耗形態と工具寿命の関係を明らかにしてきた。さらに加工条件が工具寿命や工具摩耗に及ぼす影響も明らかにした.これらの結果は以下の通りである. 1)エンドミル加工は断続切削であるために切削抵抗は工具1回転中に刃数分変動している.ところが工具の軸方向にある特定量切込みを与えると全く抵抗の変動がなくなることを明らかにした.とりわけ高硬度材料の加工では切削抵抗,特に法線抵抗値と変動成分が非常に大きくなるために抵抗値の変動は工具の倒れ量に直接影響をし,このことが工具と工作物の幾何学的干渉を複雑にし,工具寿命に何らかの悪影響を及ぼしていると考えられる.実際に工具寿命試験を行なうと,抵抗値が変動しない条件では寿命が数倍伸びることを明かにした.科学的には工具の振動が工具の干渉条件,すなわち工具の実すくい角や逃げ角が大きく変動することがわかった.さらに工具逃げ角が小さくなる箇所で工具の逃げ面摩耗が大きくなった.切削抵抗が変動しない場合には,エンドミルの刃先全体が均一に摩耗するが、切削抵抗が変動する場合には部分的摩耗が進行し,結果的にこのことが工具の寿命を短くしている. 2)ステンレス鋼のエンドミル加工においては,切削熱の分散が上手く行かないために切削速度を上げることができないが、摩擦係数の小さいなコーティング膜を新たに開発して実験したところ,発生する切削熱を抑制することができ,その分加工速度を上げられる可能を明らかにした。被削材料によって最適な加工条件は大きく変わることが明らかになった。 3)高硬度金型材料や溶着性難削材料を加工するとき,工具の摩耗は切削抵抗,振動などの力学的因子,溶着などの熱的因子,拡散などの化学的因子を考慮して加工条件を決めなければならない.
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