研究概要 |
マグネシウム合金の超精密切削加工に関するデータはほとんど報告されていないため,基本的な切削特性すら明らかにされていない.そこで,初年度は切削力,仕上面性状,切りくず生成などの被削性を実験的に調べ,超精密切削における代表的な被削材であるアルミニウムの切削特性と比較することにより,マグネシム合金の超精密切削における問題点を検討した.以下に,得られた主な結果を示す. 1.切削力に関する特性 マグネシウム合金(AZ31)の比切削抵抗力は,通常切削ではアルミニウムの半分程度であるのに対して,超精密切削では同程度の大きさ(主分力)を示した.しかし,背分力の値は,特に微小切込みになるほど大きくなった. 2.仕上面性状に関する特性 アルミニウムに比べてスクラッチが多く発生し,良好な鏡面が得られない.乾切削において,ほぼカッターパス全周にわたる長いスクラッチと短い無数のスクラッチが生成した.切削油剤を用いることにより長いスクラッチは消えた.短いスクラッチは被削材中のAl-Mn介在物(粒径約10□m)より発生しているのが確認された.介在物を含まない純マグネシウムの仕上面にはほとんどスクラッチは生成せず,良好な鏡面が得られた.これより,長いスクラッチは,工具刃先における溶着物(マイクロビルトアップエッジ)に起因するものであり,短いスクラッチは金属組織中に析出した金属間化合物などの微小欠陥によるものであることが判明した. 3.切りくず生成 マグネシウム合金は,通常切削では鋸歯状切りくずを生成し,比較的脆性的な変形挙動を示す.しかし,超精密切削ではコイル状の連続型切りくずを生成し,アルミニウムの切りくず生成同様,見かけ上延性的な変形挙動を示す.
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