研究概要 |
初年度は,マグネシム合金の超精密切削における切削力,仕上面性状,切りくず生成などの基本的な切削特性を調べた.被削材中に析出した金属間化合物がスクラッチ生成の大きな原因となり,鏡面性状に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.最終年度は,主として金属組織的観点から仕上面にスクラッチを生成する要因を探求するとともに,スクラッチの無い良好な鏡面を得るための方法について検討した.以下に,得られた主な結果を示す. 1.AZ31圧延材(含0.2-1.0%Mn)では,金属組織中に析出したAl-Mn化合物が硬粒子として作用してスクラッチを生成させるが,鋳造材であるAZ91(含max0.15%Mn)では,Mn系ではなくMg系の化合物Mg_<17>Al_<12>が析出するが,これはスクラッチ生成にほとんど関与しない. 2.Mn量(0.05%及び0.1%)を少なくしたAZ31の超精密切削を行った結果,いずれの試料もスクラッチの生成が激減した.マイクロ組織中には,通常のAZ31のようなAl-Mn化合物の析出はほとんど見られず,代わりにMg系の金属間化合物と思われる析出が見られた.スクラッチの生成を防ぐためには,金属組織的にはMn系の化合物を析出させないことが重要であることがわかった. 3.切りくずの形状および流出の仕方が,スクラッチ生成に影響を及ぼす.切削油剤の使用は工具の溶着を防ぎ,スクラッチの低減に効果があるが(前年度実績),工具すくい面での切りくず堆積を起こさせ,切りくずによるスクラッチ生成の原因となる.切込みを大きくすることで,切りくずの流出が容易となりスクラッチが低減した. 4.Mn量を変えたAZ31の切削力を比較した結果,主分力,背分力ともに有意な差は見られなかった.しかし,切取り量(送り,切込み)が微小になるほど,Mn量の多いAZ31では背分力が大きくなり,Al-Mn化合物が影響していることがわかった.
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