母材に気相合成ダイヤモンドを被覆して硬さや耐摩性を向上させ、工具や金型に適用する基礎研究や実用化研究はこれまで随所で行われてきた。しかし、ダイヤモンドのもつ可視光に対して透明であるばかりでなく、マイクロ波に対しても透明である特性を応用して、マイクロ波の窓材への適用を試みた研究はない。 本研究は機械的性質に優れ、しかもマイクロ波に対して透明な気相合成ダイヤモンドを窓材に適用することを目的としたもので、しかもITER(核融合装置)への適用を念頭においている。このITERが国際的にわが国六ヶ所村に設置されることになるのかどうかは未決定だが、わが国への誘致が決定した折りには日本原子力研究所を中心に、ダイヤモンド窓の開発・評価研究が短期間に確立されなければならない。本研究は、これまでの気相合成ダイヤモンドに関する研究を踏まえて、ITERに対応できるダイヤモンド窓の開発研究を推進することを念頭に行なったものである。 ITERに使用するダイヤモンド窓は直径約100mm、厚さ約2mmのダイヤモンド板を100枚ほど必要とするもので、それに対応できる設備は保持せず、筆者の経産省大型プロジェクトで使用してきた60kW級マイクロ波CVD装置を用いることを前提に、保有している300W級マイクロ波CVD装置で研究することの問題点を抽出することを行なった。 結果、透明度の優れたダイヤモンド板は合成装置のマイクロ波のパワーに大きく依存することがわかり、300W級マイクロ波CVD装置では種々合成条件を選定しても得られないことがわかった。また、筆者がリーダーを務めた経産省大型プロジェクトで所有し、現在(株)神戸製鋼所で所有している60kW級マイクロ波CVD装置ではITERに使用するダイヤモンド窓の合成が可能であることがわかった。しかし、ダイヤモンド窓は、マイクロ波に透明なばかりだけでなく、真空容器としての機能ももたせる必要から安全性を保証するための機械的性質を解明し、使用時における安全性を保証する必要がある。是非ともわが国での製造を可能にし、さらに評価法を確立する必要があり、これらの方針を確立したことが本研究の成果である。
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