変種変量生産への即応を目指して、自律分散型生産システムが研究されている。自律分散型生産システムでは、生産システムの各構成要素が自律し利己的に働くために、システム全体の目的に合わせて生産進行することが困難となる。そこで、システム全体の目的に合う生産進行を、各構成要素間の調和によって実現する新たな制御方法の開発が必要である。また、変種変量生産におけるシステム全体の目的は、生産量の最大化を目指したい場合、リードタイムの最短化を目指したい場合やそのバランスをとりたい場合などShopへの要求の変化に合わせて、常に変化する。このようなShopへの要求に対して、生産量またはリードタイムの片方の最適化を目指した制御方法では対応できないので、リードタイムと生産量の両方を考慮し、それぞれの目標値を達成するための制御方法が必要となる。そこで、自律分散型生産進行において、生産量とリードタィムの両方の目標値を実現するために、設備に作業を差し立てる場面で起きる設備間の競合を制御する方法を提案した。 この方法では、システム全体の目的として与えられる目標生産量と目標リードタイムを達成するために、生産負荷などの生産環境に応じて、各ジョブには目標進捗度が設定され、各設備には目標稼働率が設定されることを前提として、ジョブが設備を選択する意思決定において、ジョブの目的だけでなく設備の目標関数である稼働率を制約条件として用いることで、競合を制御する。具体的な競合制御の方法は、目標進捗度からある一定値α以上に進捗の早いジョブは、目標稼働率からある一定値β以上に稼働率の高い設備からの応募を受け付けない応募制限条件を付ける方法である。この方法を用いた場合の生産シミュレーションを行った結果、自律分散型生産進行において、目標リードタイムと目標生産量に近づけられることを確認した。
|