本研究は、極薄板である箔をシェルのような立体的な形状に成形する方法を提案することを目的としている。プロセスは、第1工程で箔から多くのひだを持つ波形状の薄板構造体を作り、第2工程で折り畳んだ提灯を伸ばすようにして張出すという2段階加工である。板面に沿った面内引張り力でなく板厚方向への圧縮力によって板材を薄く押し広げるため、加工限界が向上する。 この波形状の構造体は、薄板を平らな工具と歯形工具の間で圧縮されると作製できることは確認されていたが、従来の平らな歯先の歯形工具を用いた場合は、加工場所によって大きく加工度が異なり、マイクロ加工への適用の可否が問題となっていた。そこで本年度はこの問題を解決するため、歯先形状の影響を検討した。その結果を以下にまとめる。 1.測定が簡単のため、寸法の大きな板厚0.2mmのアルミニウム薄板A1050-H材を対象とし、半径1mmの円筒形状の歯先形状を持つ歯形工具を作製し、平らな工具との間で圧縮加工を行った。その結果、従来問題であった加工場所による加工度不均一がなくなり、加工精度の問題点が解決された。また作製された波形状の薄板構造体は、直接引張りによって伸びを与えた場合に比較し、本プロセスでは20倍の破断伸びを得ることができた。 2.板厚20μmのアルミニウム箔を材料とし、半径0.25mmの歯先を持つ工具を作製して、本加工法のマイクロ加工への適応性を検討した。その結果、直接引張りによって伸びを与えた場合に比較し、本プロセスでは5倍の破断伸びを得ることができた。 3.マイクロ張出し加工の実際例として、板厚20μmのアルミニウム箔を用い、一辺20mmのピラミッド形の四角錐を作製することができた。
|