研究概要 |
米糠から米糠油を抽出した後に残る脱脂糠は,現在,飼料や肥料として使用されている.本研究はこの脱脂糠の有効利用を目的として,脱脂糠の合成高分子を含浸して焼成することによって得られる「多孔質炭素材料」を工業材料として使用することを目指している. この米糠焼成材には炭素が持つ低摩擦・軽量などの特性が保持されており,良好な摩擦摺動特性を示す.したがって,これまでに直動軸受けとしての応用が進んでおり,一部では商品化までされている.本研究では,この多孔質炭素材料からなる軸受けを射出成形によって製作し,大量に安価に商品化するための基礎となる仕様書の作成を目指している.本年度は,実際に射出成形した直動軸受けにおける破壊限界モーメントの測定,およびFEM解析によって直動軸受け各部に生じる応力集中を評価するシステムの確立を行った.得られた結果の要約を以下に示す. (1)射出成形した直動軸受けの破壊限界モーメントを測定した.限界モーメントの値はM_f=2.2N^*m程度であった.この値は市販の直動軸受けの低荷重用LMガイドに匹敵する強度である. (2)強度のばらつきは平均でワイブル係数m=6程度であった.この値は10〜15程度以上が製品化の目安であり,この値はばらつきのやや大きな範疇に入る. (3)3次元FFM解析を実施し,直動軸受けの破壊強度を評価するシステムを確立した.多孔質炭素材料の破壊試験で得られた材料強度に基づいて,直動軸受けの強度を制度よく予測することが可能になった. (4)直動軸受けに生じる応力集中の程度への直動軸受け各部における形状因子の影響について検討し,破壊強度を向上させる幾何学的考察の検討手法を確立した. (5)レールと直動軸受けの隙間の大きさと破壊強度の関係をFEM解析に基づく数値解析によって解明した.
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