研究概要 |
今年度が最終年度であり,天然素材から作製した多孔質炭素材料を用いた直動軸受の製品化を目指した.この素材を軸受等の摺動部材として工業製品に利用する際の最も大きな課題は,製作した多孔質炭素材料の寸法安定性であった.すなわち,湿気や水環境下で膨潤性を示す点が精密部品への応用を妨げていた.本研究ではこれまでに,その膨潤性を引き起こす成分を特定し,それを改質する処理法に成功している.本年度は,はじめに,改質材の良好な耐水性・膨潤性を確認した後に,摩擦摺動特性を測定して,製品化に向けた取組みに入る計画を立てた. (1)安定した多孔質炭素材料を作製できるシステムを確立した.はじめに,加圧成形によって作製した素材について,寸法安定性に関する試験を実施した.その結果,純水中に浸漬すると従来材では0.2%膨潤したのに対して,改質材では0.03%にまで低下させることができた.さらに,米糠ではなく,もみがらを用いて作製した多孔質炭素材料で同試験を実施したところ,0.015%の低膨潤性を得ることに成功した.両素材ともに十分な寸法安定性を示すことが確認できた. (2)直動軸受設計の取組み直動軸受の開発は三木プーリと共同で展開を図った.はじめに,膨潤性を改善した改質材料の摩擦試験を実施した.その結果,米糠焼成材では0.2〜0.3程度の動摩擦係数を得た.これに対して,もみがら焼成材では動摩擦係数0.08という極めて良好な値を得た.そこで,三木プーリと検討の末,もみがら焼成材を用いた直動軸受を作製し,無潤滑・耐水・低摩擦・静寂性を売りにした丸型直動軸受を製品化することを決定した. 本研究は,当初米糠を焼成した炭素材料の製造とその利用を目的に展開してきた.その途上で,さらに高性能なもみがら焼成材の開発に成功した.そして,もみがら焼成材を用いた軸受の設計を開始するまでに至った.現在は,大量生産・安価生産を念頭に置いた射出成形品の開発を三木プーリと共同で実施し,製品化を目指している.
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