研究概要 |
本研究で取り組んでいる多孔質炭素材料は,米糠や籾殻が持つ天然の多孔質構造と,そこに含まれるミネラル成分を,できるだけ手をかけずにそのまま利用し,工業原料として利用していくことを目指して開発しているものである.さらに,射出成形できる炭素材料として低製造コストという利点も活かした商品化を目指している. 米糠あるいは籾殻は,900℃で焼成された後,合成高分子と混合・焼成して多孔質炭素材料となる.この素材には,炭素が持つ良好な摩擦摺動性,導電性,水素透過性,軽量,環境無負荷などの性質が保持され,さらに,天然のミネラル成分の炭化物が硬度や強度を高める働きをしている. 本研究では,耐水性・膨潤性などの環境劣化に関する耐久性を克服するのが先決であるとの判断から,実用上重要な水環境下での劣化を防ぐ課題に取り組んだ.得られた結果の要約を以下に示す. (1)化学的な分析の結果,耐水性を低下させているのは,米糠中に含まれるK,Ca,Pが結合したリン酸塩の持つ吸水性によることがわかった.すなわち,そのような化合物が生成しない工夫が必要となる. (2)具体的には,米糠焼成粉体に含まれるリン酸塩を成形前に洗い出す前処理が有効である. (3)P等の耐水性を低下させる化合物が生成しない籾殻の焼成材料を作製する手法を確立した. (4)籾殻焼成材料には,良好な耐水性・膨潤性が備わっていることを確認した. 以上の結果から,籾殻焼成粉体を用いたペレットを射出成形することによって,製造コストが低く,さらに籾殻焼成材の特長である無潤滑・高耐水性・安定した摩擦特性を持つ軸受けの製品化が可能であることが明らかになった.これによって,今後は具体的な製品に対して,製造企業と共同で製品開発への取組みを加速できる環境が整った.
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