研究概要 |
(1)ロバストな管フランジのボルト締め付け手順の提案 すでに確立している管フランジの締付けボルトのばらつきの推定,および最適な締付け手順を求める手法を拡張して,実用上問題がない程度のボルト軸力のばらつきを許容しつつ,現場の作業者が受け入れやすい締付け手順の確立を目的として解析を実施した.具体的には,従来からアメリカ機械学会の主導で構成されているPVRC(圧力容器研究委員会)から提案された手法に加えて,作業性を重視した<ボルトを一方向に締め付ける手順>について検討した.その結果,90℃離れた4本のボルトを予め規定の軸力で締付け,その後他のボルトを一方向に締め付ける手順が実用的に有効であることを示した. (2)締め付け力不足のボルトが管フランジのシール性能に及ぼす影響 管フランジを締め付けているボルトのうちの1本が,締め忘れあるいはゆるみによって完全に軸力を消失した場合,さらには隣接する2本のボルトの軸力が消失した場合について検討した.その結果,石油関連産業で広く使用されている20インチのclass300程度の管フランジでは,ボルトが1本欠落すると他のボルトに初期軸力の約1.3倍の軸力が発生し,2本欠落すると初期軸力の1.6倍を越える軸力が発生することが明らかになった.このことは他のボルトが塑性変形する可能性を示しているが,シール性能を支配するガスケット面圧分布についてはさほど顕著な変化は見受けられなかった. (3)数値解析を基本としたシール性能の評価方法の確立 管フランジの漏れ実験結果とガスケット面圧およびフランジの回転変形を評価する数値シミュレーション結果より,ガスケットに発生する最大面圧によってシール性能を評価できる可能性を確認した.
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