研究概要 |
本研究では,表面改質皮膜の高機能化のための一つの方法として,粒子分散型の複合表面改質法を取り上げた.粒子を分散させるマトリックスとしては,種々の皮膜の開発が進められているが,本研究では比較的安価で手軽に皮膜を形成できる無電解Ni合金めっきをとりあげ,油潤滑下,高温環境下および真空環境下において,主としてすべり接触条件下で実験を行い形成皮膜のトライボロジー特性を評価するとともに,粒子分散改質皮膜の解析モデルの構築を進めた.実験評価結果と解析結果を比較検討することにより,改質皮膜の高機能化のために最適な粒子分散条件(最適粒子分散量・粒子径など)について明らかにする. 本年度では,実験の一部と解析モデルの構築を行った.実験では,油潤滑ならびに10^<-4>Paの真空環境下で,粒子分散複合改質表面の評価実験を行った.実験には,無電解Ni-P合金をマトリックスとし,PTFE, BNおよびSiCの各粒子を分散析出させた複合めっきを用いた.これらの分散粒子は弾性率などの機械的性質が大きく異なっており,解析結果と実験結果を比較検討するのに最適と考えられるものである. 評価実験と平行して,分散粒子とマトリックス接触境界のすべり,表面の接触状態に応じた摩擦係数の変化,等を考慮した実際の接触状態に近い,粒子分散複合改質皮膜の解析モデルの構築と解析を進めた.本年度の結果からは,弾性率の小さい粒子を分散させた場合めっき層に大きな応力が発生すること,粒子間距離が小さいほど応力は大きいこと,セラミックスのような弾性率の大きい粒子を分散させた場合のめっき層の応力は粒子の影響を受けにくいことが明らかとなった.一方,めっき層内応力に及ぼす粒子径の影響については検討中であり,次年度にモデルの改良と平行して解析を進める.
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