研究概要 |
○本研究の基礎となるのは潤滑油の高圧物性とトラクション特性であり,その結果は以下の通りである. 1.状態図に基づく潤滑油高圧物性の推算 潤滑油の自由体積理論を基に,合成ナフテン油,ポリブデン,シリコンオイル,鉱油の状態図を基に,密度-温度-圧力および粘度-温度-圧力関係式を新たに構築した.また,潤滑油の固化現象が二次相転移のときのEhrenfestの関係式で説明できることが分かった.この結果は韓国・済州島で開催された第2回アジアトライボロジー会議で発表し,Journal of Synthetic Lubricationにも掲載が決定している. 2.トラクション特性に及ぼす潤滑油の機械的性質 固体側からのアプローチによるトラクション特性の解明を目的とし,弾性論の基本的物性である体積弾性係数,せん断弾性係数ポアソン比の測定を行った結果,油分子の凝集状態のパラメータT_<VE>-Tで整理できることが分かった.また,トラクション特性と機械的性質の関係を究明した結果,トラクション係数を支配する因子が体積弾性係数であることが分かった.この結果は,「高圧力の科学と技術」で解説し,また,2003年4月ニューヨークで開催されるSTLE2003で発表する. ○本研究課題についても,「t-CVT停止時の閉じ込めEHL油膜厚さに及ぼす潤滑油高圧物性の影響」を解明すべく,分子構造の異なる11種類の潤滑油を使用し,光干渉計でEHL膜の停止過程を観察し,ここで購入したデジタル高速度カメラで解析を行った.その結果は以下の通りである. 1.EHL停止直後の閉じ込め油膜厚さの傾向は,基本的には粘度圧力係数αと粘度ηの積αηに依存し,油膜厚さ自身は,その停止直前のヘルツ接触半径1.4倍の位置での速度に油膜厚さによって規定される. 2.閉じ込め油膜のスクイズアウトは,潤滑油の固化現象により規定され,閉じ込め油膜が粘弾性固体を呈することで,閉じ込め油膜を保持し,再始動時に保護膜として損傷防止に寄与する. 以上の結果は,2003年3月開催の日本機械学会九州支部講演会で一部発表し,詳細については,2004年1月ドイツ・シュツットガルトで開催される第14回国際トライボロジー会議(エスリンゲン会議)で報告予定である.
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